中村倫也さん主演の”戦慄の田園ミステリー”ドラマが始まりました。
中目黒から亡父の生家であるU県S郡八百万(やおろず)町ハヤブサ地区に移り住んだミステリー作家の三馬太郎___田舎あるあるで若い男が転居してきたら自治会に勧誘されて地域の労働力として期待され、当然のように消防団に引き入れられました。
通称”ハヤブサ消防団”、八百万町消防団ハヤブサ分団にはクセ強めのメンバーが勢ぞろいしていました。
池井戸潤さんが文芸誌に連載小説として書いていた原作が書籍になって間もなくドラマ化が決まりました。
個性強めのキャスト陣に翻弄されるドラマの結末と連続不審火などの事件の真犯人に迫ります。
以下、原作のネタバレ有りなのでご注意下さい!
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ドラマ「ハヤブサ消防団」のあらすじと登場人物
あらすじ
三馬太郎(中村倫也)が華々しい小説家デビューを飾って5年、今やミステリー作家としては鳴かず飛ばずの崖っぷちで、現実逃避するかのように野趣あふれる山の中の集落に残された亡父の遺産の古い家(桜屋敷)に移住することになりました。
程なくして同年代の藤本勘介(満島真之介)に誘われて地域の消防団に入ることに。
その頃、ハヤブサ地区では不審火が続き、太郎の目の前で三件目の火災が起き、縁があった波川志津雄(大和田獏)の家が焼け堕ちました。
その時期にはもう連続放火事件なのでは?!という疑惑も上がっていたのです。
ハヤブサ消防団の一員となり、少しずつ地域に馴染み始めた太郎でしたが、もともとひ弱なタイプの太郎は消防操法大会の練習で疲れ果て、本業の執筆にも集中できません。
そして連続不審火の”犯人”が滝壺で遺体となって発見された山原浩喜(一ノ瀬ワタル)ではないかという噂が集落に広がっていき、太郎は困惑していたのです___。
登場人物
三馬太郎(みま たろう 35歳/中村倫也)
ミステリー作家としてデビューして5年。
横溝正史の再来と賞賛されたものの、なかなか人気が続かず、都会の生活に見切りをつけて”ハヤブサ地区”に移り住んできた。
長閑な暮らしに憧れていたはずが、ハードな消防団に引き込まれて、連続放火事件に直面することに…。
立木彩(たちき あや 28歳/川口春奈)
太郎より前にハヤブサ地区に住み始めた映像ディレクター。
ハヤブサ地区のPRドラマ企画を提案し、町おこしの活動を手掛けている。
藤本勘介(ふじもと かんすけ 35歳/満島真之介)
太郎を消防団に勧誘した団員で、工務店で働いている。
太郎とは子供の頃に一緒に遊んだ記憶がある。
生まれ育ったハヤブサ地区を愛しており、連続放火事件の解決のために奔走している。
真鍋明光(まなべ あきみつ 35歳/古川雄大)
ハヤブサ地区を担当する太陽光発電の”ルミナスソーラー”の営業マン。
太陽光発電システムの構築のためにハヤブサ地区の土地の買収をしかけている。
徳田省吾(とくだ しょうご 50歳/岡部たかし)
ハヤブサ消防団の班長で、呉服屋の二代目店主。
森野洋輔(もりの ようすけ 56歳/梶原善)
ハヤブサ消防団の副分団長で、役場の土木課で働いている。
宮原郁夫(みやはら いくお 60歳/橋本じゅん)
ハヤブサ消防団の分団長で養鶏場の経営者。
健作とは犬猿の仲だが、消火活動では頼りになる人物。
山原賢作(やまはら けんさく 60歳/生瀬勝久)
ハヤブサ消防団の部長で林業の仕事をしている。
郁夫とは犬猿の仲だが、後輩たちの面倒見は良い男。
村岡信蔵(むらおか しんぞう 65歳/金田明夫)
八百万(やおろず)町の町長で、ハヤブサ地区のことが気に入らない。
ハヤブサ消防団の面々とは対立している。
山原浩喜(やまはら ひろき/一ノ瀬ワタル)
ハヤブサ地区の住人で強面の男。
太郎には好意的で野菜や肥料を分けてくれた。
波川家の火災の後で行方不明となり、水死体となって発見された。
ドラマ『ハヤブサ消防団』の見どころは?
都会の生活と行き詰まった執筆活動に疲れて八百万町のハヤブサ地区に移り住んだ太郎でしたが、『田舎あるある』のカルチャーギャップに戸惑いながらも次第にその土地の暮らしに馴染んでいきます。
その中でも、強引に引っ張りこまれた消防団の活動で、リアルな消防活動の風景が見られます。
さらにそこに小説家としての太郎の洞察力、観察力、そして語彙力を通して、これまでには見えてこなかった続く火事や行方不明事件の謎が詳らかにされていきます。
舞台となるハヤブサ地区___群馬県富岡市、そして甘楽郡下仁田町を中心にしたロケ地も、日本の田舎の原風景ともいえる場所で、作品世界にぴったりです!
まさか、こんな場所で恐ろしい陰謀が進行していただなんて…。
ハヤブサ地区 連続不審火とは?
ネタバレ注意!
- (太郎移住前)山田崇彦 宅:ごみ焼却炉からの延焼?
- (太郎移住前)富岡和夫 宅:納屋の車から出火?
- (ドラマ一話、太郎移住直後)江島波夫(ドラマ版:波川志津雄)宅:納屋から出火
- 山原林業:ハヤブサ消防団部長・山原賢作の作業所兼事務所から出火
- 信岡信三(ドラマ版:村岡信蔵)宅:台所から出火
- 吉田夏夫 宅:郵便局長の吉田から太郎に「助けて」と連絡後に出火
三件目の波川家(江島家)の火災では、妻の病気と経済的に追い詰められた状況から、前の二件の連続不審火に便乗して自演したのでは、という疑惑を持たれていました。
また、山原浩喜(一ノ瀬ワタル)がこれまでの行状の悪さから1~3件の放火を疑われており、行方不明からほどなくして水死体で発見されました。
ドラマ『ハヤブサ消防団』の原作は?
『半沢直樹シリーズ』で知られている作家・池井戸潤さんの小説『ハヤブサ消防団』です。
慶応大学を卒業し、バブル真っ盛りの時期に三菱銀行(現在の三菱UFJ銀行)に勤務していた池井戸潤さん。
子供のころからミステリー好きで、江戸川乱歩賞受賞作は全て網羅して楽しんで、いつか自分でもそんな小説を書いてみたいと思っていたようです。
具体的に動き出したのは1995年、32歳の時に銀行を退職して企業のコンサルタントをする傍ら執筆活動を始め、三年後に憧れの江戸川乱歩賞にチャレンジして『果つる底なき』で受賞し、作家デビューをしました。
”35歳のミステリー作家”という太郎のキャラクターは自らの執筆活動も投影して作り出されたものなのでは、と推察してしまいます。
そんな彼が得意としているのは『半沢直樹シリーズ』や『花咲舞シリーズ』など銀行などを舞台にしたサスペンスフルな経済ドラマでしたが、もともとが江戸川乱歩賞を目指したミステリー好きということで、本作『ハヤブサ消防団』は現在のトレンドを随所に取り入れ、面目躍如な作品に仕上がっています。
ドラマ『ハヤブサ消防団』原作との違いは?
- 小説版ではその舞台の地名が「八百万町ハヤブサ地区」、ドラマ版では「ハヤブサ地区」でシンプルになっています。
- 小説版には出てくる太郎の父(勝夫)、その遠縁の久則と沢子がドラマ版には登場しません。
- ”ナミさん”のフルネームが、小説版では「江島波夫」、ドラマ版では「波川志津雄」
- 真鍋が営業している太陽光発電の会社が小説版では「タウンソーラー」、ドラマ版では「ルミナスソーラー」
- 八百万町町長の名前がドラマ版では「村岡信蔵」で、小説版では「山原信蔵」から母親の離婚により「信岡信三」。実はこの苗字、ハヤブサ地区における家と人間関係の深いヒントになっています。
ネタバレ注意!原作小説の結末は?!
桜屋敷(太郎の家)の物置にあった古いアルバムに残された写真のなかに、山原展子(やまはら のぶこ)という女性がいます。
『山原』というとおり、展子はハヤブサ地区にあった山原家の出身です。
名家だった山原家でしたが、没落し、展子はハヤブサ地区を出て海外に渡った時に『オルビス・テラエ騎士団』という宗教団体と、その教祖である高斎道春という人物に出会います。
”オルビス”とはラテン語で、英語ではorb(オーブ)であり、球、天体、世界、宝珠を表す言葉です。
その繋がりの中で展子は”聖母”として崇拝される存在になっていきました。
オルビス・テラエ騎士団は展子にゆかりの土地であるハヤブサ地区を聖地とすべく、土地を買収していたのです。
その実働部隊がルミナス・ソーラー(小説版ではタウンソーラー)でした。
”ルミナス”とはラテン語で「光が満ちる」とか「輝く」という意味の言葉です。
ルミナス・ソーラー社はオルビス・テラエ教団が所有する会社で、社員たちは教団配下の『オルビス十字軍』の実働部隊でした。
そしてハヤブサ地区に日常的に出入りしていたルミナス・ソーラーの営業マンである真鍋と信者たちが、土地を売らない者の家に放火し、生活を立ち行かなくさせて、土地を売らざるを得ない状況を作っていたと判明したのです。
結果的に6件に及んだ放火と、その邪魔になった山原浩喜、ハヤブサ地区の郵便局長・吉田夏夫の殺害、太郎が襲撃される事件の犯人はこの真鍋とオルビス十字軍の仕業でした。
まとめ
『このハヤブサは、僕が信じていたような…長閑で平和な場所ではなかった…』と太郎が述懐した通り、山間の山村の裏側には何代にもわたったドロドロの地縁・血縁のしがらみと、ソーラーパネルに象徴される宗教団体の暗躍が隠されていたのです。
ずっとそこで生きてきた人々には気づかない小さな違和感など、太郎はよそ者であるがゆえに気づいてしまい、さらにミステリー作家としての突出した能力で、かき消されそうな謎を詳らかにしていくのです。
小説版からドラマ化するにあたり、若干の変更や、情報の取捨選択が行われていたようです。
例えば、立木彩に川口春奈さんがキャスティングされていることなどに注目してみましょう。
彩は、原作ではオルビス・テラエ騎士団の広報担当として活躍していたという過去がありましたが、ドラマ版ではハヤブサ消防団、そして太郎との絡みが増えるのではないでしょうか。
もしかしたら太郎との関係に恋愛要素も加味されるのでは?と期待してしまいます。
原作の面白さに加えてドラマならではの、役者さんたちのお芝居によって増幅する化学反応を秋までたっぷりと楽しんでいきましょう!