日曜劇場『下剋上球児』が中盤まで進み、越山高校野球部は11年に渡る『夏の大会初戦敗退』記録を返上し、一勝をゲットしました。
ドラマも後半に突入し、南雲修司(鈴木亮平)は教員免許の偽造という罪が不起訴になり、ようやく一安心。
そしてここから次のステップに向かう越山高校野球部と南雲と山住(黒木華)。
6話ラストで『日本一の下剋上まで373日』とありました。
日本一、というには、甲子園に出場し、どこまで進むのか?!
原作である書籍『下剋上球児』の結末も交えて考察してみましょう。
原作の結末は?
『下剋上球児』原作(原案)は野球専門誌出身のフリーライター・菊池高弘さんによるノンフィクションです。
2013年に三重県立白山高等学校に赴任した東拓司教諭。
その当時の野球部は三学年合わせて5人だけ。
荒れ放題のグラウンドで、試合をすることもできないありさまでした。
まず草刈りから始まった新生野球部の活動は少しずつ実を結んで実力をつけ、並み居る競合を打破し、5年後の2018年に県大会を突破して甲子園に出場して話題になりました。
白山高校野球部が対戦したのは愛知県の名門・愛工大名電高校野球部ということで、一回戦で敗退はしたものの、そこまで到達したことの努力は認められ、地元で愛される野球部になりました。
修司のモデルになった東拓司教諭は現在は白山高校から三重県立昴学園高校に転任し、その野球部で監督を務めています。
東監督のキャラを、ドラマでは南雲と山住に割り振って作劇を盛り上げているようです。
南雲修司は監督に返り咲けるのか?
野球部員との絆
南雲は教員免許の偽造という罪を告白して警察に出頭し、教師を辞めました。
必然的に、野球部の監督も辞めて、一切の関係を断つことになります。
結果的には不起訴処分となり、20数社の就活を経て物流系の会社に内定をもらい、ようやく明るい兆しが見えてきたところです。
野球部の活動が軌道に乗ってきた頃、遠距離通学で疲れ果てている根室(兵頭功海)を家に泊めるようになると、野球部の生徒たち、そしてOBも南雲を慕って集まってくるように…。
水面下では野球部員たちが自分で考えて、南雲の減刑嘆願の署名を集めるなど、その信頼関係は継続していたのです。
山住も、自らが越山野球部の監督を務めることを目指しはしましたが、やはり南雲の経験と知識は越山高校野球部には必要不可欠で、その結びつきはより強固になっていきました。
2017年、県大会初戦の日。
越山高校野球部と繋がりを断っていた南雲はベンチに入れませんでしたが、観客席から部員たちの成長をみつめ、そして精神的支柱となって支えていたのです。
そんな南雲は生徒たちにとっては既に『監督』的な存在になっていました。
周囲の視線はまだ厳しく、全ての問題が払拭されたわけではありませんが。
野球部の部員たちやその周囲の人々は、南雲の監督復帰を熱望していたのです。
犬塚爺の存在
南雲は教員を辞職していたため、家族との生活のためには収入を得る手段が必要です。
そこでクローズアップされるのが、犬塚翔(中沢元紀)の祖父であり、地元の有力者・犬塚樹生(小日向文世)です。
犬塚爺は溺愛する孫の翔が入学すると決まったことで畑をグラウンドに作り替えて提供したり、私立強豪校から監督(塩尻:町田啓太)をスカウトしてくるなど、越山高校の野球部に対して絶大な貢献をしています。
その必死さの裏には、自身の眼が見えなくなる危険を自覚しており、見ていられる間に、翔を育てて立派なプレイヤーにしてやりたいと願っています。
2017年夏の段階では南雲の教員免許偽装に『騙された!』と憤り、偶然顔を合わせるとバチバチに対立していましたが、二人の間にはそれでも『越山高校野球部を甲子園に連れていく!』という目標がありました。
その目標のために、南雲の存在は必要不可欠なのです。
犬塚爺がその権力と財力を翔のために使い、南雲を間接的に支えて監督として迎え入れたら、越山高校野球部は大きく飛躍していくことは間違いないでしょう。
南雲修司と家族の関係、その生活はどうなる?
南雲の妻、美香(井川遥)は前夫・小柳(大倉孝二)との間に授かった息子・青空(番家天嵩)を連れて南雲と再婚し、娘のなぎさ(倉田瑛茉)を産みました。
南雲の事件の際に、家族の生活を守るために美香は子供たちを連れて東京で働く道を選びました。
青空は南雲を慕って三重に残りましたが、それ以降1年以上、美香は東京でなぎさと二人で暮らしながら働いていたのです。
その間、前夫の小柳が『実の父』として青空に接触を図り、南雲も美香もいらだちを感じていました。
しかし、家族が三重と東京に離れたことや、小柳が頻繁に言い寄ってくる状況で夫婦の関係も微妙に変化していたのです。
南雲が三重県の教員採用試験を受けて、一家で三重にやってきたのには、美香の母が体を壊して介護の必要があったから、という理由がありました。
何の迷いもなく親思いの美香の気持ちを第一に考えて行動してくれた南雲の決断を思い出した美香は、霧が晴れるように清々しい表情で、東京の仕事を辞めて三重に戻り、父や子供と皆で暮らす道を選んだようです。
青空となぎさを交え、家族5人が笑顔で食卓を囲む情景は、危機を乗り越えた南雲一家の絆の象徴でした。
越山高校野球部は甲子園に行けるのか?
毎回、エンドロールの最後に『日本一の下剋上まで○○○日』というテロップが映ります。
もともとの原案が、部員の数も足りず、連戦連敗どん底野球部が甲子園に行く、というテーマの書籍ですから、恐らく2018年夏の甲子園大会には行くのでしょう。
2017年、モデルになった白山高校が初戦を戦ったのが7月15日でした。
そして翌2018年、松坂商業高野球部を破って決勝を突破し、白山高校が甲子園行きを決めたのが7月25日です。
最新の状況で初戦突破を果たした後に表示されたのは『日本一の下剋上まで373日』。
フィクションですから、若干の差異があってもおかしくありませんが、恐らく、越山高校は決勝まで勝ち上がり、県大会優勝、そして甲子園への出場を果たすものと思われます。
まとめ
モデルになった白山高校野球部の戦歴を見るに、2018年の甲子園出場は既定路線と思われますが、そこに至るまでに南雲の為人が家族を交えて描かれ、その魅力にひかれた生徒たちが絆を強めて甲子園を目指して邁進していく、という『下剋上の物語』になる予感がします。
南雲のモデルとなった実在の先生は今な他校に転勤しながらも野球の指導を続けており、未来に向けて歩き続けています。
底辺高校と言われ、問題児ばかりだった野球部も、様々な才能が開花し、生徒一人一人のキャラクターが確立されてきました。
もしかしたら、2018年の三年生が大学に進学し、教師になって2023年の越山高校野球部の指導に励む未来があるかもしれません。
そして犬塚も祖父の夢に後押しされてプロ野球に進む未来があるかも!
どん底から這い上がった彼らなら、何でもできそうです。
塚原あゆ子監督の演出がさえわたるラストになることを願って、ドラマ後半戦を楽しんでいきましょう!